ゲームとマンガを消費し続けた存在が、人間関係もねらっていくにあたっての備忘録です

感性が磨耗していく

感性が磨耗していく。俺たちの人生は終わりに近づいている。あるべき姿なんてどこにもなかった。泣かずにいられるように。薄皮を一枚隔てた隔壁の外に敵がいる。だからこの世界は健やかに心を削っていく。泣かずにいられるように。立ち上がる勇気がなくても、笑えるように。

 

すべての文章、言葉の羅列、自我の発露はそれ自体に意味などなくてもその存在を許されていた。意味を与えるのが観測者なら、忌み嫌われるのは誰だろうか。感情の感想を乱暴に散らばらせる。散逸した言の葉が、足に突き刺さった。振り向きもしない影を求める。振り返りもしないまま。ただ、

 

水の音が聞こえた。

 

流れだ。文章は流れで、調律された文章はそれだけで読み進めるに値する。流れて消えるものを追いかけるには、人生は早すぎる。すくいあげたものに名前をつけるのはあまりに難しい。生きて歩いて働いて、この世界はゆるやかに感情を殺していく。思っているよりずっと、忘却は早い。

記憶はどんどん磨耗していく。それなのに大切なものは消えてくれないのだ。遠くなるばかりの鳴き声が、でもけっして消えはしなかった。鈍い痛みを失ってしまうことにどこまで真摯でいられるかわからないんだ。すりへっていく情動を殺すことに、無意味を繰り返して死ぬことに。

 

楽しかったことを思い出せるようにとっておく。夢も希望もなくていい。翼も牙も要らないんだ。特別なことなんてなにもいらない。誰とどこで、いつなにをしたかなんてみんな忘れてしまっても、そのときのざわめきは忘れないでいられるはずだ。消えずに残ったものが絶対だ。捨てられなかったものが信念だ。

大丈夫だ。泣きそうなほどちっぽけな自分を奮い立たせるとき、人は人になるのだから。

 

人生は終わりに近づいていく。あるべき姿なんてなくて、ほとんどの生活に意味なんてない。それを泣く必要なんて、どこにもない。忘れられないまま感情を連れて行く。忘れられないまま、ぜんぶ引き連れていく。