ゲームとマンガを消費し続けた存在が、人間関係もねらっていくにあたっての備忘録です

ホライゾンゼロドーンおもしろかったよ

 最近は自分が過去にやったゲームの感想ブログを読むのが楽しい。いろんな視野があってなるほどーとかいやそれだけはないだろとか思う。そうやって読んでるとほんとうに素晴らしいレビューもあれば、アド貼ってブログでレビューしてるくせにろくでもない薄っぺらな感想だったりして、俺でも書けるぞと思ったので書いてみたのがこちらになります。「きれい!ド迫力の戦闘!あとなんか!」みたいなゲームレビューで金が稼げるこの世界を許すな。動機がアレなんだけどホライゾンゼロド―ンをやって欲しいというこの気持ちだけは本物なので、やってみてください。一度アンダーテールを僕のブログ見てやってくれたって人がいたの、本当にうれしかったんですよね。

 

 ホライゾンゼロド―ンは今年プレイした中でも異質な面白さがあるゲームであり、これは文章として落とし込む価値があると思ったゲームだった。あとこれは勝手に言ってるけれど、PVがいいゲームはいいという自説は今のところ補強され続けているので多分正しい。E3のトレーラー時点で感じたヤバさは間違っていなかった。

 

 舞台は人類が衰退し、部族的な社会でゾイドに似た機械の獣を狩りながら生きている自然豊かな地球だ。異端者として育ち、ひょんなことからロストテクノロジーウェアラブル端末を身につけた主人公アーロイは、なぜ人類は衰退したのか、機械生物はどこから来たのか、そして自分は何者なのかという答えを探していくことになる。

 

 美しい自然と違和感なく溶け合うメカニックな獣、そしてそれと弓、槍といった原始的な武器で対峙するエキゾチックな狩人のキービジュアルはそれだけで強い説得力を持っている。そう、従来の狩りゲー、FPSと大きく異なるのはその攻撃手段であり、弓と槍、スリングショットといった武器、ロープや爆弾などの罠を駆使して獲物を狩るのである。敵は戦闘ロボット、機関銃やステルス迷彩を持つものも存在する。レベル上げによるスキル獲得はあれど最大体力は微々として増えず、防御もまた頼りない。随所に配置された茂みに隠れ、敵の進みや弱点、変化に富んだ地形を考慮しながら狩りをする感覚は、FPSの緊張感を広大な自然の中に併存させることに見事に成功している。

 

キルゾーン」シリーズで有名なGUERRILLAが手掛ける新規IPとして異例のヒットを飛ばした本作を語る上で、この狩りというコンセプトがひとつ、そしてもう一つがユーザーのストレスを極限まで減らそうとする努力であると思う。もしかしたらそれは一体的なものかもしれない(コンセプトに合わせてプレイスタイルを予測するのだから)が、それを実現するのはすごいことだと思う。

弾薬のクラフト時に時間の流れが遅くなる仕様はメニュー画面をいちいち戦闘中に開くわずらわしさからうまく解放してくれる。ファストトラベル時のロード時間もマップのクオリティを考えると異常に早い。スタミナ概念が無く、ダッシュが無限にできることも好印象だ。HUDをオフにできるようにわざわざ設計しておきながらスタミナゲージがそれを許さないFF15を直後にプレイしただけに、その良さが引き立つ。ゲームモードも難易度の幅を設けて敷居を低くしている。昼夜の概念はあるものの、夜もオーロラめいた空が明るく周囲を照らすためプレイに支障をきたすようなことはなく、楽しく狩りをするユーザーの没入感増すための演出に徹している。これは「ゼノブレイド2」の夜表現においてもとても素晴らしいなと思ったのだけれど、宿泊機能があったところで毎晩夜になったからといって休まねばならないとしたらそれはユーザーにとってかなりの負荷となる。えてして夜を徹してクエストをこなしがちなキャラクター達のために夜を明るく美しく描く、というのは一つのフィクション表現として個性の出る部分なのではないだろうか。フォトモードも充実しており、SNSとの親和性を高めることで自然と宣伝が行われるという点ではバグがむしろ売り上げに貢献した(?)FF15やキムタクの奇行がバズりまくっている「ジャッジアイズ」も同じで、スクリーンショットは最近はどんなハードにもついている機能とはいえ、その応用や簡便化は重視されるべき視座だと思われる。「グラビティデイズ2」でも見たな。で、「スプラトゥーン2」や「スマブラSP」の宣伝としてもそういうのって使いやすいだろうなーと思っていたら任天堂switchには短時間の録画機能がデフォルトで、しかもボタンを長押しするだけとかいう手軽さで搭載されていることを知って笑ってしまった。どこまですごいんだ任天堂

オープンワールドにありがちの雑かつ内容がないようなストーリーでもなく、無理なく各地を回り、説得力のある背景設定を余すところなく使い切っている点は本格的なSF作品として素直に好感が持てた。けっして美少女とは言い難いアーロイが魅力的なキャラクターとして丁寧に描かれていく様子は心地よく、上橋菜穂子の「守人」シリーズのバルサみたいだなあなどと思った。服の雰囲気がそういう感じなんですよね、槍とか使うし。各所に見られる良いとこ取りもうまくやったなという印象だ。トールネックと呼ばれるキリンに似た機械生命体の頂上から周辺地図をハックするアクションは「アサシンクリード」シリーズのイーグルダイブや「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」のシーカータワーを、過酷な自然の中で崖をクライミングする姿は「アンチャーテッド」シリーズを想起させる。既存のゲームへのリスペクトはそれだけで終わればただのパクリだが、機械生命体との戦闘という圧倒的な新規性が、そこまでのすべての要素を華麗な踏み台としてひとつの存在感を誇るゲームへと仕立て上げている。

 

 個人的に「ユーザーへの細やかな思いやりがあるゲーム設計」は想像以上に大きな効果をもつように思う。PS4レベルの巨大タイトルでそれを実現するためには開発初期の段階からそれを意識的に組み込んでいく必要がある。ホライゾンゼロド―ンはその点、余計なところにユーザーが気をとられることの無いよう、細心の注意をもってつくられていると思う。もちろんそれゆえに全体的にこじんまりしているという評価もあり、これは難しい命題だなとも思う。

しかし、では余計なことに気を取られなくなったユーザーが没頭すべきなのはなにか。そう、それが狩りであり、各地に生息する機械生命体との対峙、機械炉や遺跡の探索、山賊との戦いである。正直なところ対人戦闘はキルゾーンをはじめとするFPSと変わらない。「ファークライ」シリーズの拠点制圧とかと同じ、よくできたシステムだが新規性は薄いものがある。だがそれを、狩りというコンセプトをもってオープンワールドで昇華できたという点で完全にこのゲームは新しいと言える。忍び寄ってステルスキルするもよし、罠に引っかかるまで待つもよし、強引に攻めるのもなくはない。敵機械の燃料タンクを狙って矢を放てば爆発を誘発することもできる。機械のつくりこみは尋常でなく、攻撃による部位破壊でパーツや金属がしっかり落ちる。機械から奪った重火器を使うことも可能だ。どのように攻めるか、戦略性は高く、それを達成できた時の喜びも大きい。そこにはタイムアタックや武器モーションが生み出すアクション性とは違った爽快さがある。「モンスターハンター」シリーズが築き上げた狩りゲーというジャンルに新たな境地を見出し、かつ既存のガンアクションにおもねることのない操作性はすばらしい。そういう面で考えてみると、従来のハンティング・アクションと呼ばれる爽快な狩りゲーがオープンフィールドといかにミスマッチなのかわかる。「闘鬼伝2」なんか今考えると失敗するべく失敗した感じがある。モンハンやゴッドイーターについては昔にごちゃごちゃ言ったことがあるけれど、

 

iriwopposite.hatenablog.com

ワールドや3の発売を見るにスピード感がますます上がっていくという予想はおおむね正しかったようだ。限られたフィールドで限られた時間内に決まった敵を倒すためのゲームにオープン性は要らなかったのだ。


あと、「オープンワールド」というゲームのジャンル分けはますます意味を無くしていく言葉だと思っている。オープンワールドとは3Dグラフィックが進化することでフィールドの制約がかなりの枠で取り払われたゲームスタイルを指す言葉だが、2Dで言えば「ドラゴンクエスト」や「ポケットモンスター」の時代から「世界が繋がっている」ゲームは存在する。技術が進化するうえで特に珍しい形態ではなくなるだろう。もうすでにそうだし。3Dオープンワールドの先駆けと言えば「シェンムー」であり、よく知られているところだとやはり「グランドセフトオート」シリーズが開拓者だろう。実際にありそうなアメリカの街を車で疾走し、好き放題にクライムアクションを楽しむ。あのゲームにおける本当の革新性はけっして「街が広いから」ではないのだ。ノンリニア指向、つまり「明確な目的が与えられていない」ゲームデザインがグランドセフトオートというゲームを後世に残る大作として知らしめた要因だと思う。この「明確な目的がないのにうろつくだけで楽しい」というゲームデザインはまだまだ研究の余地がある。たとえば明確な目的がなくても楽しむための一つの指針として、ウオーキングシミュレーター系のゲームが力を入れるのはやはり景観だろう。視覚、そして聴覚に訴える名作は多い。個人の好き嫌いで言えば、既存のファンタジーを取り込みながら独自の世界を信じられないほどの深度でつくりこむなら「スカイリム」を超えるものは未だしばらくはないだろう。オフラインにもかかわらずリリースから7年その座をいっさい揺るがせない存在感は圧倒的なものがある。しかしホライゾンゼロド―ンは今後ますます充足し、目新しさのなくなっていく「オープンワールド」という言葉に狩りという新たな文脈を加えた。ただのガンアクションにおさまらない戦闘の楽しさ、パターンにならない敵との邂逅。うろつきながら狩りをする、そこに目的はなくとも、十分にゲームとして楽しめる発明がある。

 

 最後に欠点も書いておく。全体のまとまりが良すぎるためか、どことなく知っているような表現が見え隠れする。ストレスには全くならないが、好き嫌いがありそうだ。そしてNPCインパクトがが機械生命体に比べてあまりに弱い。せっかく生き生きとしたグラフィックなのにみんな同じような顔でお使いとも呼べないような微妙なことを淡々と要求してくる。脇役は誰一人名前覚えられないといっても過言ではないほどであり、他のことが突出しているだけに精彩を欠く無個性な人間たちが残念だ。ただ次回作が出るような終わり方をすることもあり、それが非常に期待を持てるのは間違いない。クエスト内はともかくフィールド道中の敵が機械ということもあって道中少し、いやかなり寂しい時もあったのは事実だ。孤高の戦士としてロールプレイをする点では悪くもないのだが、その点モンハンのアイルーは本当によくできたキャラだなあと思った。収集系のやり込みは悪くないが、もしかしたらクラフト要素をもう少し増やしてもよかったかもしれない。ただそのあたりのあっさり感は個人的にはむしろ好印象だったし戦闘の面白さはかけらも損なわれないので、やらせたいことはしっかりやらせることができているゲームだと思った。

 

 正直に、正直に自分の好みでいえば良くて上の下、中の上という感じだ。アンダーテールに勝る衝撃や感動、キングダムハーツに勝る爽快感はこの作品にはないし、ストーリーはなかなか良かったけれど全体的には粗削りな印象があった。とはいえこの作品は冒頭に述べたように異質なおもしろさ、オープンワールドという言葉を置き去りにしてくれるあらたな視座を完成度の高い戦闘で実現してくれた。グラフィック、音楽ともにPS4で最初にやるゲームとして十二分に満足いくものだと思う。メインもさくさく進むので、時間に余裕がある人はぜひやりましょう。